気になるバイクをピックアップ!vol.21【2/2】
みなさんこんにちは。カイザーベルクびわ湖の脇阪です。
それでは「気になるバイクをピックアップ!vol.21」後編に参ろうと思います。
カイザーベルクびわ湖のエントランスで展示している歴史的車両の1つ「ヤマハTX750」を紹介しておりますが、後編ではメーターやエンジンなどに注目して行こうと思います。
まずは、ライダーが一番よく目にするメーターからです。
TX750は今のバイクと同じようなデザインの、スピードとタコメーターが独立したオーソドックスな2眼メーターを装備しています。
スピードメーターとタコメーターの間に取り付けられた、左右独立表示のウインカーインジケーターをはじめとしたインジケーター類も充実しております。
よく見ると、全体的なデザインは今と変わらなくとも、時代を感じさせる要素がこのTX750のメーターには存在します。
そのうちの1つに、左側のスピードメーターの速度表示が途中からタコメーターのレッドゾーンのように赤く表示されているのがわかりますでしょうか。
これが何かというと、かつてバイクは100km/hの速度制限の高速道路においても80km/h以上出してはいけないという決まりがあった時代(2000年に改定・撤廃)の名残で、この時代の国内販売向けのバイクにつけられていたものです。
しかし1980年代終わりごろにはこういった表示があるバイクもほとんど出てこなくなり、今では懐かしいものと化しています。
ちなみにウインカーインジケーターの真下にある赤色の丸いランプは「速度警告灯」で、80km/hを超えるとこれが点灯して教えてくれるというものでした。
余談ですが、この時代の四輪車は100km/hを超えるとチャイムが鳴ったりします。
続いてはエンジンです。
形状としては、743ccの空冷並列2気筒OHC2バルブのエンジンです。
最高出力は63ps/6500rpmで、最大トルクは7.0kg-m/6000rpmです。
スターターはセル・キック併用で、サイドカバーに書かれた「OHC750」「ELECTRIC」の文字が誇らしげです。
潤滑方式はドライサンプであり、オイルタンクはシート下にあります。
vol.21前編で少し触れたとおり、このエンジンは同じヤマハの名車「650XS-1」の転用ではなく、新たにこのTX750の為に開発したエンジンです。
特に目新しいメカニズムが取り入れられているものではありませんが、XS-1には付いていなかった2軸のバランサーを装備し、振動を減らしながらマルチエンジンにも負けないスムーズな吹け上がりを実現しています。
クランクシャフトは最近のホンダやNC750シリーズのような270°の位相クランクやスズキGSR250のような180°クランクでもなく、カワサキW800と同じ左右同軸の360°クランクです。
力の出方はマルチシリンダーのライバルの様に過激ではなく、ツインらしいおとなしいものでしたがその分低速から力強く、クルージング適正は高かったといえます。
余談ですが、このバイクのおもしろいところは、キャブ車でおなじみの燃料コックがなんと2つ付いているということです。
かつてのBMWR100シリーズのように、シリンダー2つでそれぞれに取り付けられたキャブレター1つ1つに燃料コックがあったということですね。
次にフロント廻りです。
ヘッドライトは実はいわゆるシールドビームです。
vol.20でも少し触れたとおり、シールドビームというのは一つの大きな電球と化した構造のヘッドライトで、この時代のバイクや四輪によく使われていました。
現在主流のバルブ交換式ヘッドライトに比べて構造が単純で寿命が長いという長所がありますが、事故を起こしてレンズが割れたりするとその時点でライトが点かなくなったり、交換の場合はシールドビーム全体を取り外して交換しなければならないという短所があります。
結果的に汎用性と、デザインの自由度や修理コストなどにおいて優れるバルブ交換式に取って代わられることになりました。
TX750はフロントにディスクブレーキを採用しております。
なんと、TX750のブレーキキャリパーは、ピンスライドタイプの片押し1ポットではなく、この当時ではまだ希少だった対向ピストンの2ポット構造を採用していました。
見えない所でライバルに差をつけていたのですね。
ちなみにこの時代のフロントディスクブレーキのキャリパーが、バイクの進行方向に対してフロントフォークより前方に取り付けられていたのは理由があって、実はこれはブレーキ作動時の摺動面の放熱性を狙ってこのように取り付けられていたのです。
しかしその後ディスクブレーキの性能は向上し対放熱性が上がっていったため、現在ではブレーキ作動時、剛性的に有利なフロントフォーク後ろ側に取り付けられるようになったのです。
さて、今回のヤマハTX750特集はいかがでしたでしょうか。
TX750はホンダCB750フォアをはじめとした当時の同クラスライバルに比べて特に目新しいものはなく、エンジンもおとなしいものでパワー勝負するにはやや分が悪いものがありました。
なのでデビュー後フロントのブレーキをダブルディスクにしたり、エンジンのバランサーを変更したりと改良を続けながら独自の路線を貫き続けました。
しかし当時の高性能戦争な市場のニーズには受け入れられにくく、結果的にTX750はさほど大きなヒットとはなりませんでした。
ちなみにこのTX750の後釜となったのが、現在MTシリーズで大ヒットしているヤマハ3気筒エンジンの遠いご先祖様ともいえる、DOHC3気筒エンジンとシャフトドライブがユニークな「GX750」です。
さて、それでは「気になるバイクをピックアップ!vol.21」ヤマハTX750編は以上です。
どうもお付き合いありがとうございました。
また次の機会もよろしくお願いします。