気になるバイクをピックアップ! ヤマハ・SR400(2021年式)後篇
みなさんこんにちは。カイザーベルク御宿・月の沙漠支配人の脇阪です。
今回は、「気になるバイクをピックアップ!」ヤマハ・SR400(2021年式)後篇をお送りします。
SR400と言えば、デビューが44年前の1978年ととても古いですが、老若男女ビギナーからベテランまで非常に多くのライダーからの支持を得て同じ形を維持しながら長年存在し続けたバイクとして非常に有名です。
しかし時代の流れ(というか新車に課せられる規制)にとうとう抗えなくなり、去年ついに人気絶頂の中絶版車の仲間入りとなってしまいました。
今回の「気になるバイクをピックアップ!」ではそんなSR400の「ファイナルエディション」と銘打たれた2021年式を取り上げていきます。
後篇ではSR400のメカニズムについて触れていきます。
まずはエンジンです。
エンジンはバイクの顔!と言っても過言ではありません。
特にSR400の様なネイキッドであればなおのことです。
SR400のエンジンは排気量399㏄の空冷単気筒SOHC2バルブです。
性能は2021年式だと最高出力は24ps/6500rpm・最大トルクは2.9㎏f・m/3000rpmです。
ご存じの通りSR400はセルスターターはついておらず、また昨今の単気筒エンジンによくある、振動を減らして吹け上がりをスムーズにするエンジン回転バランサーさえついていないという、エンジンとしてはこの上なく単純な構造をしています。
それ故にエンジンはキック始動による人力、回転数を上げていけば振動がめっぽう増えてくるといった特徴もありますが、それがかえってSR400というバイクの個性を作り出しているのも事実です。
私はかつて学生だった頃、当時の友人が乗っていたSR400を借りて運転させてもらったことがありました。
その時、60㎞/h前後で郊外の道路を流している際にニーグリップした股間に伝わるエンジンからの振動が非常に心地よかったのを未だに覚えています。
これこそが、このエンジンが生み出すSR400の個性であり魅力なのではと思っています。
一般的に高回転が不得意とされる単気筒エンジンですが、SR400のエンジンはボア×ストロークが87.0㎜×67.2㎜とだいぶショートストロークなシリンダーを採用しているため意外と高回転でも力を失わず素早く回ると評判です。
余談ですがSR400はインジェクション仕様になっても燃料コック(負圧式)が付いていたりします。
インジェクション車だと基本的に必要ない装備なんですが、燃料残量警告灯が付いたりしたら【リザーブ】に回したりしなければいけないのでしょうか。
また余談ですがエンジン前方下に見える黒いコーヒーのボトル缶みたいな部品は、燃料タンク内で気化したガソリンをエアクリーナーボックスに戻すための「キャニスター」と呼ばれる装置で、2018年式以降のSR400に取り付けられています。
ちなみにこのエンジン、元をたどるとヤマハが70年代後半に出していたビッグオフローダー「XT500」に積まれていたもので、そのためSRもデビュー当時は普通二輪免許で乗れる排気量にしたSR400と、排気量はそのままの兄貴分「SR500」が併売されていました(その後SR500は2000年に絶版になりました)。
SR400と言えばキックスタート、というくらいSR400にとってキックスタートは重要な要素ですが、そのキックスタートもデコンプレバーを引いてエンジン内の空気を抜ける様にしてからキックスタートペダルを動かしてピストンの位置を調節した後、レバーを放して一気にスタートペダルを蹴り込みエンジンに火を入れるという一手間も二手間もかかるものです。
「なにそれめんどくさそー」なんて思う人もいるでしょうが、これこそがSRで、この一連の動作を手際よく、そしてスパッとできるSR乗りほどカッコよく見えるバイク乗りはいないでしょう。
ちなみにキックスタートをスムーズに行えるようにするため、SR400にはデコンプレバーの他エンジン右側のカムカバーの上に「デコンプインジケーター」なる小窓が付いています。
デコンプレバーとこのデコンプインジケーターをうまく活用することがSR400の簡単・確実なキックスタートの実現に繋がります。
続いてはメーター・ハンドル周りです。
1978年のデビュー当時は一般的なデザインだったハンドルスイッチボックスも今ではもはやSR400専用部品と化しています。
シーソー式ではない回転式のキルスイッチやスライド式のヘッドライトのハイ/ロー切り替えスイッチが時代を感じさせます。
ちなみに左スイッチボックス下にある短いクラッチレバーみたいなものが、前述のデコンプレバーです。
このデコンプレバーを引いている間はエンジンから空気が抜ける様になり、キックスタートペダルで簡単にピストンを上下させられます。
ちなみにエンジンがかかっている状態でデコンプレバーを引くとエンジンが止まりますので気を付けましょう(当たり前だ)。
メーターのアップです。
メーターはオーソドックスなスピード/エンジン回転速度の2眼タイプです。
もちろん、共に電気式ではなくフロントホイールやエンジンから直接ワイヤーで動かす昔ながらのアナログな機械式です。
文字がくるくる回転して動くアナログ式のオド/トリップメーターも今となっては希少な装備です。
文字盤は白であることが多いSR400のメーターですが、限定仕様車など一部のモデルでは黒だったりします。
インジェクション車ですが燃料メーターは無い代わりに燃料残量警告灯でガソリンの減りを教えてくれます。
ちなみにステアリングステムボルトの下にある黒いキャップは何かといえばオイルタンクのキャップです。
SR400のエンジンはエンジン内部を潤滑したオイルはエンジン下に溜めずに一度オイルポンプ(スカベンジポンプ)で吸い上げて別の所にあるオイルタンクに回収するいわゆる「ドライサンプ」潤滑方式を採用していますが、そのオイルタンクがどこにあるかと言えば車体フレームの上側のパイプを流用して設けられているためこんな所にオイルタンクのキャップがあるという構造になっています。
フロント周りです。
メッキの鉄製フェンダーにスポークホイールがいい味出しています。
フロントブレーキは2001年以降は片押し2ポッドキャリパー装備のディスクブレーキですが、それまではヤマハの往年の名車「650XS-1」そっくりのドラムブレーキを使っていました。
また余談ですが、1978年デビュー当初のSR400もディスクブレーキでした(2001年以降のものとは形が違います。その後すぐにドラムブレーキになりました)。
スポークホイールなのでタイヤ装着にはチューブが必要となります。
純正オプションのキャストホイールでチューブレス化ということも可能ですが、個人的には車体色に合わせてスポークホイールのリムを黒いものにしたりワイド幅のものに変えたりしてさりげなく迫力ある外見にしてみたりしたいですね。
リア周りです。
リアブレーキは年式を問わず同じ形のドラムブレーキです。
ちなみにホイールは前後共に18インチです。
SR400はABSが装備されていませんが、一説によるとABSはいずれ新車に装着が義務化されるだろうがSR400はこの形を維持したままABSを装備することができないためついに生産が続けられなくなったと聞きます。
決まったこととはいえ残念なものです。
余談ですがマフラーも、形が変わっていない様で意外と変わっています。
特にインジェクションを装備した2010年式以降は触媒が入れられたり消音のために容量を増やされたりしてサイレンサー部分が太くなっています。あと、さり気にヒートガードが付いています。
SR400のリプレイスマフラーと言えばクラシカルな車体デザインにマッチしたキャブトンマフラー(膨らませている途中のロング風船みたいな形したやつ)が定番ですが、個人的にはアップタイプのサイレンサータイプマフラーを組んでスポーティに仕上げてみたいですね。
さて、今回の「気になるバイクをピックアップ!」ヤマハ・SR400ファイナルエディション2021年式篇はいかがでしたか。
ご覧の通り決して高性能なバイクではありませんが、音や振動でバイクそのものが五感に訴えかける様な独特の乗り味が多くのバイク乗りを虜にしています。
私自身正直見ての通り単気筒のバイクにあまり興味がなくオフ車ビジネス車以外で単気筒バイクを所有したことはないのですが、そんな私でもこのSR400は実際に買って乗ってみたいと思わせる唯一の単気筒ロードスポーツバイクでもあります。
ネオクラシックスタイルのバイクがもてはやされる昨今惜しまれつつも絶版になってしまったSR400ですが、いつの日か形が大きく変わってもSR400が復活してくれることを願っております。
ああ、SRよ永遠に!