気になるバイクをピックアップ! 番外篇その2
みなさんこんにちは。
カイザーベルク御宿・月の沙漠支配人の脇阪です。
今回は、前回の「気になるバイクをピックアップ!番外篇」の続きをお送りします。
前回より「気になるバイクをピックアップ!番外篇」と称して館内に置いてあるCBX1000(SC06/1982年式)に関してよくおたずねされることをQ&A形式でお答えしておりますが、今回はその続きです。
前回はCBX1000の特徴でもある空冷並列6気筒エンジンに関しての内容ばかりでしたが、今回は車体やその他に関しても触れていこうと思います。
Q5:6気筒なんてエンジンを積んだCBX1000は速いですか?
A:何とどう比べるかにもよりますが、少なくとも今の同排気量のスポーツバイクにはどう逆立ちしたって運動性能では勝てません。
排気量が100㏄ほど少ない今のヤマハMT-09やカワサキZ900RSと比べても圧倒的にこの2車の方がよく加速し、よく止まり、よく曲がるでしょう。
CBX1000は前期型(CB1型)のデビュー当時から重い車体とそれを支えきれていないフレーム・足回りが指摘され、結局ホンダのスポーツバイクは4気筒のCB-Fシリーズが台頭していくことになったという経歴があります。
とはいえ、普通にツーリングする分には何ら問題の無い性能です。
このバイクはそもそも40歳過ぎのオッサンなので、無茶して運動させる方が酷というものです。
Q6:このバイクは重いですか?
A:重いです。
少なくともマイナーチェンジでスポーツツアラーと化したこのSC06型に関しては、装備重量でいえば300kgほどになると思います。
今のバイクでいえば、ヤマハFJR1300やカワサキ1400GTRとほぼ同等です。
ネイキッド形状だった前期型CBX1000でも装備重量は270kgほどあり、今のCB1300スーパーボルドールに近い重量です。
とはいえ、車重に関しては乗っててそんなに気にしたことは無かったりします。
余談ですが私が過去に所有したバイクで最も重かったのは装備重量約380kgのトライアンフ・ロケットXです(隙自語)。
Q7:重い割にはこんな細いタイヤで大丈夫ですか?
A:大丈夫だ、問題ない
タイヤの太さはどちらかというと勢いよくコーナリングをするときに影響するので、この車体でこの幅のタイヤでもツーリング等で普通に乗る分には特に気になりません。
逆を言えばこの幅のタイヤでコーナリング時に車体を深く倒してしまうとリアタイヤが接地する部分が無くなって踏ん張れなくなるので、やはり無理はしてはならないという事になります。
余談ですがこのCBX1000が履いているタイヤのサイズはフロントが100/90-19で、リアは130/80-18であり、今のバイクでいえばGB350とほぼ同じです。
大型バイクですがタイヤを交換しても今の大型バイクほど費用がかからないというささやかなメリットもあります。
Q8:フロントフォークに付いているこのホースは何ですか?
A:セミエア式フロントフォークのイコライザーホースです。
このCBX1000に限らず、80年代前半から半ばの一部のバイクには「セミエア式ショックアブソーバー」というものが使われていました。
これはショックアブソーバー(ダンパー)内にスプリングとオイルの他、圧縮空気も入れてそれで衝撃吸収を行おうというものでした。
スプリングそのものを軽くすることができたり、縮めば縮むほど踏ん張る力が強くなるいわゆる「プログレッシブ効果」が期待できたりといろんなメリットがありましたが、タイヤ同様時々空気を入れてやらなければいけないとか一手間があったり、また経年劣化でシール類が傷むと勝手に空気が抜けてぐにょぐにょになってしまうとかいうデメリットがあったため廃れていきました。
現にこのCBX1000のリアのショックアブソーバーもセミエア式でしたが、経年劣化で空気が漏れて何度入れ直してもすぐにダメになるので結局YSS製のダンパーに変えました。
話を戻すとこのイコライザーホースはフロントフォークを構成する2つのセミエアダンパーの空気の圧力を左右で均等にするためのホースです。
セミエアフォーク特有の装備ですね。
ちなみに前期型は前後共に普通のオイルダンパーです。
Q9:変わった形のフロントブレーキディスクですね。
A:「ベンチレーテッドディスク」といって、四輪でよく使われているものです。
ベンチレーテッドディスクはブレーキディスクの間に空気の通り道となる穴を設け、それによりブレーキの冷却性能を上げて耐フェード性を向上させようというものです。
しかし重いうえに高コストで、そもそも四輪と違って走行風の当たりやすい環境にあるバイクのブレーキディスクにそこまで必要かという事もあり、その後技術が進化してインナーローターとアウターローターをフローティングピンで固定したフローティングブレーキの方が軽くてレバータッチも良いという事でこちらが主流になり、ベンチレーテッドディスクはバイクではちっとも広まることなく消えていきました。
ちなみに往年の名車ヤマハVMAX1200のリアブレーキディスクもベンチレーテッドディスクです。
その他では80年代半ばのホンダのバイク(CBX400Fなど)が「インボードディスク」という外からはブレーキディスクが見えない特殊な形状のディスクブレーキを採用していましたが、そのブレーキディスクもベンチレーテッドディスクでした(やはりすぐ消えましたが)。
Q10:パニアケースは最初から付いていたのですか?
A:はい、おそらく新車の時から標準装備だと思います。
当時の仕向け地にもよるそうですが、このCBX1000後期型は仕向け地が北米だとパニアケースは付いた状態で売られていたそうです。
他にもアップタイプのハンドルやステップが北米向け専用品になるそうです。
ちなみにヨーロッパ仕様だとハンドルの高さが半分くらいになり、ステップもバー1本分ほど後ろにあります。
また、パニアケースはオプション扱いになりウインカーの位置も異なります。
余談ですがこのパニアケースの利便性はまあまずまずといったところです。
形がややいびつで薄いのでそんなに多くのものを詰めることはできませんが、すごいと思ったところはこの時代でいわゆる「ワンキー(メインキー1本でエンジンの始動からパニアの脱着までできる)」を採用していたところです。
ちなみに15年ほど前に乗っていた前期型はキーが(諸般の事情で)3種類ありました。
Q11:古いバイクですが部品は出ますか?
A:ものにもよります。
旧車あるあるの「部品供給問題」ですが、このCBX1000だから特別何か違うという事はありません、他の人気旧車と部品事情はそんなに変わらないと思います。
とりあえず外装など、このバイクでしか使われていない部品はまず新品はありません。
私もフロントカウルステーを直す際は、インターネットオークションを利用して中古部品を取り寄せました。
逆に、エンジンのガスケット類やその他、「他のバイクでも使われている共通部品」は今でもメーカーから新品が手に入る場合があります。
過去には新品のヘッドカバーボルトやタコメーターケーブルを新品で取り寄せて交換したことがあります。
あとは修理の際は純正そっくりに作られた、いわゆる「リプロパーツ」やその他社外品を駆使するのも1つの方法です。
全て純正で固めた「フルオリジナル」にこだわらなければ意外と何とでもなります。
(逆にフルオリジナルを求めると途端に困難を極めます)
Q12:置いてあるのはどうして人気のある前期型ではないのですか?
A:前期型はもはやおいそれと手の届く値段で取引されておらず、少なくとも私にはもう手が出せなかったからです。
※15年ほど前に乗っていた前期型(CB1)の写真です
そもそも前期型(CB1)には前述の通り以前所有していたことがあり、5年ほど乗ってその時は満足して手放した後、結局紆余曲折あってまたCBX1000に乗っているのですが、同じ前期型に乗るのもなんだと思ってこの後期型にした次第です。
ちなみにCBX1000の前期型と後期型にはそれぞれの良さがあると考えています。
とりわけ前期型はバイクとしての純粋なカッコよさにあふれ、後期型はツアラーとしてよく考え抜かれた機能美にあふれていると思っています。
Q13:旧車の所有は大変ですか?
A:もちろん大変です。
何をやるにしても「気軽に」とはいきません。
[エンジンは朝イチで始動するのに5分くらい格闘しますし、前日からのバッテリー充電や場合によってはジャンプスタートもほぼ必須です。
(でも一度火が入ってエンジンが熱を持てばその日はすぐに始動できます)
私が最近相棒(CBX1000)ではなく相方(CT125)で出かける回数が多いのはそのためです。
車格の差もあるでしょうが、圧倒的に「楽」です。
上述の様な部品供給の心配や突然の予期せぬ故障だってあり得ます(セルモーターが一度死にました)。
逆に大きなトラブルはそれくらいで、だいたいのツーリングは無事に帰ってきています(あとタコメーターケーブルも切れました)。
Q14:ではどうしてCBX1000を選んだのですか?
A:ナンバーワンの性能よりオンリーワンの個性を持ったバイクの方が自分には向いていると判断したからです。
とりわけCBX1000はバイク界唯一の「空冷並列6気筒ツインカム24バルブエンジン」という個性を有しており、その強烈な個性と乗り味が私の琴線に触れるというところがあります。
今でも最新のバイクに浮気しそうなことはありますが、過去の経験上「どうせすぐに飽きる」と自分に言い聞かせて無かったことにしています。
今回の「気になるバイクをピックアップ!番外篇」はいかがでしたでしょうか。
「CBX1000というバイクは知っているけれど実際に乗っている人の話を聞く機会は無い」という方の興味を満たす内容であればと思います。
基本的にこのバイクは当方の館内に置いてありますので、ご興味ありましたらぜひ間近でご覧いただければと思います。
また、このバイクに関して不明な点や知りたいことがありましたら私にお尋ねください。
それではお付き合いありがとうございました。
今後とも当方のブログをよろしくお願いいたします。